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ハロヲタとして有名だったお相撲さん、富士司は夏の名古屋場所を最後に引退したらしいですな。
最高位は幕下31枚目だそうで。関取にはなれなかったわけだが、番付が幕下まで上がればたいしたものといわれるのが大相撲の世界。全国のハロヲタがタイマン勝負のトーナメントをやったとしたら、優勝するのは現在でも富士司でありましょう。


22日深夜のことですが、テレビ朝日『ギョーテック』を見ていたら、作詞家の松本隆がゲストで登場し、軽くびっくり。この人をテレビで見かけられるのは非常に珍しい。というか、番組中の告白によると、バラエティに出演するのは初めてなんだそうだ。
なぜ、よりによってこんな番組に……。まあ、藤井隆は80年代以降のアイドルソングに対する含蓄が深い人ですから、松本隆の聞き手としてはまさに適役かもしれない。
もっとも、番組中ではそんなディープなトークはほとんどありませんでしたが、非常に印象に残ったのは、松本隆のこのひと言。
「歌手は歌に感情なんか込めなくていい。感情は、ぼくの詞に全部書いてあるから」
下手な歌手におれのせっかくの表現を汚されてはかなわんと言わんばかり。ガツーンときましたよ。そのとき飲んでいた焼酎の酔いも、一気に醒めた。いっぺん、言ってみたいよね。「デザインは目立たなくていい。必要なことは全部コピーに書いてあるから」うーん、本当に言えたらカ・イ・カ・ンだな。
でも現実は、コピーのほうが邪魔者扱いされることのほうが多い。「細かいコピーなんか誰も読まないよ」などとさえ言われるのです。悲しいよね。
あと、「同性に支持されるアーティスト」として育てられるような詞を書く、とも言っていたな。女性アイドルだったら、女性が共感できる歌。アイドル産業の方法論的な話が語られるとき、必ずといっていいほど出てくるテーマだが、松田聖子という巨大すぎる実例を持つ人の口から発せられると、説得力の重さが違う。
しかし、これはトップランナーの作詞家だからこその考えで、言葉の持つ力が100%かといえばそんなことはないでしょう。同性から見てカッコイイ(つまり容姿、見た目)とか、曲の質が高い(心に残るメロディである、あるいは音楽のプロにも注目されるような優れた個性がある)といった要素も重要なはずです。「詞・曲・アイドル本人の偶像性」の3要素ですね。これが揃わないと、メガセールスを記録するようなアイドルはつくれないんじゃないかなあ。