ちがいますシスターズ

17日、紀伊國屋ホールで「大人の麦茶」公演『ちがいますシスターズ』を観劇してきました。
まだ千秋楽の舞台が終わっていないので詳しい感想を述べるのは避けたいと思いますが、いくつか簡単に覚書を。

  • かつてテレビドラマでおなじみだった、下町人情もののような舞台設定。昭和レトロ・ブームに乗ったのかな。テレビの舞台中継で、松竹新喜劇長谷川伸およびそれを源流とする大衆文芸ものの芝居をよく見ていた子どもの頃の記憶がよみがえり、何かこう、壁の隙間から自分の過去を覗き見ているような、不思議な感覚に襲われた。
  • 大人の麦茶は去年の『ネムレナイト』以来2公演目。ずいぶん印象が違う、というか別種の芝居なので、『ネムレナイト』的なものを予想しての心構えを透かされ、かなりとまどう。
  • しかし「そういう話か」とわかれば、楽しめる芝居です。『楊貴妃漢方薬』の感想は、「おもしろかった」という基本姿勢で書いたんですが、正直なところ、期待ほどではなかったんですよ。保田の登場シーンの多くも、なくていいとまでは思わなかったが、幕間のコントみたいな雰囲気で、ストーリーの本流に絡まないのが不満だったし、まだ演じるだけで精一杯の保田には荷が重い役だったと思いました。だから芝居の中身そのものより、舞台づくりという商業芸術に関わる人たちへの憧れの気持ちを吐露したりして、ごまかしてます。その点『ちがいますシスターズ』は、思っていた芝居とはちがったけれど、これはこれでありだと思う。
  • 役者さんたちの演技力は今回のほうがよくわかる気がする。力量、高いっすね。とくに長澤素子がすばらしかった。
  • 保田は、「妹がコンプレックスと憧憬がないまぜになった複雑な感情を心に秘めて育ちそうな美人の姉」の役。真面目で素直で従順のようだけれども実はしたたかで、ちょっと男を試すように艶っぽい電波を出したりする、そういう女性の先輩社員に、ドキッとしたことはありませんか。ぼくはそんな過去の体験を重ね合わせて見ていました。
  • で、ちゃんとそういう女に見えるからたいしたものだ。
  • アヤカが芝居の中でもアイドルのオーラを出しまくりなのも、華があっていいが、保田は舞台では舞台女優っぽい。知らないで見たら、劇団の正式な一員と思い違いしそうなくらい、役柄以上の色を発していない。まあ、年3回も舞台を踏むわけだから、もう立派な舞台女優といっていいかもしれないけれども。
  • 幕が開く前に、紀伊国屋の地下のカレースタンドで軽く腹に入れる。チキンカレーじゃなくてコロッケカレーにしとかなかったことが、この日唯一の後悔。