漢方薬の効能

「熱愛発覚」直後は、まーお互い気に入って付き合ってるんだったらべつにいいんじゃねえの、くらいにしか思ってなかったんだけど、その後のテレビでの庄司のビビりまくったふるまいを散見しているうちに、だんだん腹が立ってきた(苦笑)。
協定上いっさい喋るわけにはいかない事情があるのだろうと容易に想像できるとはいえ、おどおどした薄ら笑いを浮かべるだけの有様には、芸もなければ利発さもない。いかなる場合でも身を削ってみせる覚悟のできた人種が芸人ではないのか。せめて顔つきだけでももうちょっと、肝の据わったふうを装ってくれよと思う。
そのくせ、本心は自慢したくてしかたないんだな。情報をチョロッと小出しにして、共演者の反応を探ったりしてやがる。


さて、15日の夜は池袋シアターグリーンへ、劇団ファントマ公演『楊貴妃漢方薬』を見に行ってきました。
体全体の造作がいかにも日本人的な、五頭身に近い役者がそろった劇団で、あのなかに並ぶと、保田は小柄で顔がちっちゃくてかわいいわ。
役柄は玄宗皇帝の死んだ先妻、玄宗楊貴妃の間を邪魔しようと、あさはかなちょっかいを出す道化役。腹筋善之介とともに熱演しておりました。
ストーリーの支流的な場面でしか登場しないので、「なくてもいい役」などと感想を書いているブログも見かけましたが、物語のリズムを変えて観客の気分をリフレッシュさせるコメディリリーフの役割は大切よ。芝居から浮いてしまうリスクもないではないが、そこまでストーリーに無関係な存在ではなかったし。
ただ、確かに主人公や重要な脇役との絡みがほとんどない。娯楽性に徹した、その場面では視線をさらうおいしい役柄ではあるものの、このような演出にしたわけをプロデューサーに聞いてみたい気がしました。いや、だってフツーに考えれば玄宗楊貴妃とのやり取りをやらせたくなる役じゃん。
もっと大きな意外性を言えば、芝居自体がかなりシリアスなドラマだったこと。伊藤えん魔だの美津乃あわなどという芸名だけ聞けば、どんだけ笑わせてくるんだって先入観を持っちゃうよ。とくにヘヴィな場面が続く後半は、見ているこちら側もちょっと疲労した。隣の席の人は、ときどき船を漕いでいたような雰囲気も……
また、ここぞという場面で使われる音楽があざといというか、くさいとも感じた。まあ、そのへんの好みは人によりけりでしょうけど。
でも、おもしろい芝居でしたよ。楊貴妃が天才的アロマセラピストであるという設定はすごいね。これを思いついた時点で、プロットがばばばっとできちゃったんじゃないでしょうか。「傾国の美女」などといわれ、男をダメにする女の代表のように伝えられる楊貴妃。その楊貴妃の美しさにおぼれ、国をダメにしてしまった玄宗。今日ではそのようなイメージしか残っていない男女の出会いを、ちょいと手心を加えるだけで、切なくもかっこいい恋物語に変えてしまえるお芝居って楽しいよなー。漢方薬の効き目、こちらの胸にも染みましたよ。
舞台の上だけの小さな空間で、思うままに世界を表現できる人たちが、心から羨ましい。表現力の不自由な広告屋の、素直な感想です。