寂しがり屋の一匹狼

藤本がモーニング娘。に加入したのは、「グループの活性化」「歌唱力の向上」「話題づくり」といった、娘側の事情が大きかったと思いますが、もう一つ、一匹狼的な性向が強い藤本に、運命共同体の中での広い視野、グループに対する献身性などを学ばせようとしたのかもしれません。
写真誌にすっぱ抜かれた事実をもって、「何も学んでねーじゃん」と批判することもできるけど、ソロでやっているときと、グループでやっているときとで、求められるものが違うということは充分にわかっていたと思うよ。感受性ゼロのアホならともかく、藤本はむしろ繊細なほうじゃないの。一匹狼然と振る舞っているのはシャイなゆえのポーズで、実は人とのつながりを感じて安心したいタイプでしょ。それがかなえられたのがガッタスで、モーニング娘。はそうじゃなかった、というのが今回の件の発端にある気がします。グループだけど基本的には個と個の集まり、お互いがライバルという意味のことを語っていた(と思う。別の人だったかな?)ところからも、グループの一員としての意識が薄かったのかなあと思います。
おかげでリーダー失格の烙印を押されてしまったが、アーティスト・藤本美貴としては傷がついたわけでもなんでもないから。松田聖子みたいに、どんなにスキャンダルにまみれようと、平然と乗り越えていく大先輩も業界にはいます。転んだっていいの、立ち上がれば。それが人生だとオシムも言っていた……かどうかは知らんが、いかにも言いそうではある。
ヤングタウン』を聞くと、アイドルにしては踏み込んだ部分まで認めているし、本当に申し訳なく思って反省している様子も伝わった。惜しむらくは、ボキャブラリーの乏しさか、謝罪が同じ意味の言葉の繰り返しだったり、本当に言いたいことを表現する言葉が見つからず、事務所が用意したコメントに逃げているような雰囲気があったことだが、まあ謝罪って難しいですよ。うっかり言質を取られるようなことを言っちゃうと、冗談で済まされなくなる事柄だけに。
「仕事に集中している男性に呼びかけたとき、『ん?』と仰ぎ見た顔の無防備さが好き」などという文学的なディテール描写で男性の好感ポイントを語れる、引退したみうなのような言語力の持ち主のほうが珍しい業界なわけだから。