まだネムレナイト

ネムレナイト』、とてもおもしろかったので、ちょっと感想を書きます。
どうしても芝居の内容に触れてしまうことになるので、「続きを読む」をクリックする際はご注意を。




芝居には関係ないんですが、幕開けの前、席に着いて「いちおうトイレいっとこうかなあ、いや大丈夫かな」などと考えているとき、ふと、館内に流れている音楽に気づきました。んん? はっぴいえんどではないか。実によい趣味です。急に楽しくなってきた。これから始まる芝居のテイストと関係あるとしたら、絶対おれの好きな種類の物語であるに違いないと予感した。予感はまあ正しかったけど、はっぴいえんどは結局、無関係でした。


保田の演じるタカコは、亭主の死を儚んで自殺しておきながら、タカコに惚れた幽霊のエツロウとたちまちねんごろの仲になっていちゃいちゃするという、自由恋愛主義的というか、かなりぶっ飛んだキャラクターです。
それはエツロウの下半身のだらしなさを説明する意味があり、またタカコという役柄は、3人の成仏できない幽霊たちがなぜ死んだかを客に説明するための、聞き役でもあります。
当初はバラバラに語られるこのエピソードが、コメディリリーフであり、狂言回しでもある刑事によって一本に縒り合わされ、女の子のモラトリアム的幽霊・トランの曇りのない感性から出た指摘を受けて、さらに別の方向へ展開していく。
トランは、死せる者の迷いを拭い去り、やすらかに成仏させて、自らは息を吹き返します。愛はときに人を死へ追いやる一方、死から救うこともできる、の図。刑事は、事件の解決はできなかったが(というか殺人事件ではなかったので)、人の心の傷は癒すことができそうな余韻を感じさせて大団円へ。人間は過去を振り返ってばかりでは前へ進めないよ、生きている者は生きている者同士でよろしくやるのが楽しいんじゃないかと、そんなメッセージが暗黙のうちに伝わってきます。


と、自分なりの感じ方を書いてみて、芝居そのもののおもしろさがまったく表現できてないことに、我ながらびっくりするやら呆れるやらです。これ以上書くのが嫌になるくらい力抜けますが、ホントにおもしろいし、楽しいお芝居でしたよ。幽霊の姿が見える人と見えない人がいることを、最初はギャグっぽく出しておいて、あとになってそれがとても重要な意味に変わっていったりなど、「なるほど」な仕掛けがふんだん。スラップスティックとシリアスの塩梅が絶妙です。
これのDVD、一般販売はされないのですね? 予約してくればよかったなー。


それはそうと、アップフロントが「大人の麦茶」や「聖ルドビコ学園」といった小劇場系の劇団に制作協力し始めたのは、なかなか興味深いです。自分とこのタレントの有効活用と経験を積ませる場の開発という意図なのか、エキセントリックシアターや大人計画みたいなメジャーな劇団を育てたいのか。今後の展開を注目したいですが、ただ、ちょっと心配なのは、ハロプロのヲタさんが、同一公演のチケットを複数枚確保して、必要ないチケットを破り捨てたりしている光景が目撃されていることです。
小劇場は座席数が限られているので、できるだけ多くの人に見てもらうためにも、チケットを何枚も独占するようなことは、あんまりしないほうがよろしいんじゃないでしょうか。