銭湯と指

いままでひと言も触れないできたが、矢口真里の『銭湯の娘!?』を、ところどころ見逃しながらも、まあまあ継続的におつきあいさせてもらってます。間もなく大団円を迎えますね。
レトロなホームドラマの、劣悪なパロディにしか見えず、最初の2〜3回で、一度くじけそうになった。ぼくくらいの歳の人間が「古くさいテイスト」と思うほどだから、若い人たちにとっては、さぞ前時代的に感じられるんじゃないかという気がする。ギャグの切れ味もいまひとつだよね。
しかし、何となく見続けているうちに少しおもしろくなってきた。ていうか、違う見方が生じた。
「家族って、何だろうね」という問いかけに対し、このドラマなりに答えようとしている。うまく伝わっているかどうかはわからないけど。
父は父であるがゆえに偉いのだという不公平かつ不合理な概念。茶の間を中心とした家族の文化。そういうものを戦後の日本がせっせと排除してきた結果、大人はテメーの利益しか考えず、敵対的買収なんか平気でやっちゃうし、ガキは引きこもるか犯罪に走るかって社会になっちまった。ずかずか家庭内に踏み込んでくる路地裏コミュニケーションも鬱陶しい限りだが、あれはあれで防犯効果もあったし、ドロップアウトしそうな人を救うセイフティネットにもなった。やっぱ人間、近所の目が光ってるとワルいことしづらいのよ。
銭湯の娘!?』が古くさいホームドラマの設定を借りてきたのは、かつて日本の家庭にあったよき文化をいまの世に取り戻そうというメッセージではないかと思う次第です。
リアリティが求められるような性質のドラマではないから、荒唐無稽なのはかまわない。そう割り切って、ストーリーの本筋だけを追っていけば、それなりに楽しめます。



いまごろになって、後藤真希主演の『指』を視聴。
星野真里演ずる崖っぷちレポーターが、後藤真希の女優を追いつめていく。この二人、実は同じ穴の狢、表と裏、鏡像同士、もっと言えばある意味双子だったという話。メインはどっちかというとレポーターだな。
他人を利用してのし上がってきた女優にしては、ちょっとあっさり諦めすぎのような気がしたのと、胸の傷にまつわるエピソードがどうも納得できぬ。ふつう、隠すよね。あと、レズのシーンは、話題づくりのためもあるんだろうけど、少々長い。もっと暗示的でもよかったんじゃない?
と、不満なところはままあるが、全体的にはおもしろかったです。後藤は、セレブリティの演技はちょっとつらいものの、貧乏劇団員の頃を描くシーンはなかなかよかった。「上昇志向だけが強く、能力の伴わない哀れな女優」という役柄として見れば好演と思います。