夏ノ夜ノ夢を見てきたよ

日生劇場で公演中の『夏ノ夜ノ夢』を見てきました。
実はぼく、シェイクスピアを一冊も読んだことがない。どうも戯曲というのが苦手でしてなあ。
忌み嫌うほどではないにせよ、あのセリフとト書きのリズムが、いまひとつ馴染めませぬ。よって、沙翁に限らず、戯曲形式の文学はなんとなく避けて通ってきちゃいました。
お芝居を見に行くようになったのも最近のことなので、もちろん舞台なんか見たことない。そういえば、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが去年、来日公演をおこなっていたようですが。映画の『ロミメオとジュリエット』はさすがに見たかな、もっともテレビの「日曜洋画劇場」かなんかでだけど(デカプリオのじゃなくてオリビア・ハッセーのやつね。フランコ・ゼフィレッリのイタリア映画)。『夏の夜の夢』は、『ガラスの仮面』の北島マヤがパックを演じた、劇団月影と劇団一角獣の合同公演のを見ました。見たというか、読みました。漫画ですから。
そんなわけで、『夏ノ夜ノ夢』がぼくのシェイクスピア初体験みたいなものになったのです。
以下、さらりと感想を。ネタバラシはしてません(古今東西の芝居の定番であるシェイクスピアの劇でネタバラシも何もないだろうけど)が、念のため隠します。


尾上松緑が主演ということで、歌舞伎ファンらしき客が多かった。和服姿のお嬢様もかなり目立ちました。
松緑丈のパックは、かなり恰幅がいい。脚色は、たぶん松緑に合わせて考えられたものですね。でも愛嬌があってよかった。ぬいぐるみみたい。
芝居そのものは、休憩後のラスト30分がすごく長く感じた。すごく何かが足りない。家に着いてから、「そうだ、笑いが足らないんだ」と思いつく。笑いを取りたい場面だったんじゃないのかなあ。なのに笑えなかったから長く感じたんじゃないかと思う。いったん、がくっとテンポが落ちちゃうんですよね。最後のシーンも、あんまりしっくり来なかった。「うーん、そっちへもってっちゃったかあ」みたいな。いささか疑問の残るシメでした。
でも、村井国夫床嶋佳子の「ああ、これが“芝居”だよな」という演技はさすが。オーベロンが登場するシーンになると、雰囲気が変わるのです。


さてさて、保田ハーミアはかなりの熱演。
まだ荒削りだけど、演技力がどうのこうのというレベルではないのだろうし、色恋沙汰で半狂乱になった若者の役だから、荒っぽくてもいいんじゃないでしょうかね。冒頭、父イーディアスの発表でみるみる顔色を曇らせる表情の演技から、けっこう引き込まれるものがありました。好演と申せましょう。
海東ライサンダーと、これでもかというくらいいちゃいちゃしているのが微笑ましいです。保田、幸せをつかめてよかったなあと言ってあげたくなった。