ふれあう保田

録画しといたNHK・BS2の『ふれあいホール』を鑑賞しました。
民謡を現代の文脈で再構築する活動に取り組んでいる人がいるんですねえ。オルタナティブ民謡というか、ニューウェイブ民謡というか。サウンド的には「民謡フュージョン」と呼ぶのがいちばんぴったりな気がする。
本條秀太郎って三味線の世界では大先生みたいですね。本條流の家元だそうで。そういえば紅白歌合戦とかで演奏を見たことあるような気がします。
日本伝統のフォークロアが世界の民族音楽と親和性があることを教えられて、その点はおもしろかった。本條先生のバンド「ATAVUS」は、番組中でも細野晴臣にネーミングしてもらったと言ってましたが、1989年に細野晴臣をプロデューサーに迎えて結成されたということです。確かにあの頃はワールドミュージックが一つのブームになってたかなあ。「アーシー」なんて言葉が流行ったのも同じ頃だったかな。当時はバブル経済だったけど、いま「ロハス」とか言ってるのと似たようなもんだ。景気と自然回帰指向って、密接な関係がありそう。
まあ、それはいいや。
収録スケジュールの関係なのか、思うようにリハーサルができなかったらしく、本條先生が「この短い時間でよくここまで」という意味のことを繰り返し、保田を誉めていました。金沢明子さんも自分のサイトで「勘がいい」って感心してたけど、番組のなかでもそれっぽいことを言ってましたね。
もっとも、自分たちの弟子ではないから採点が甘かったと見ることもできますけど、ここは素直に受け止めて、技術と表現力が問われる世界で長くやってきたプロの目から見ても、保田の音楽的センスがかなり高い水準にあるということなのであれば、非常に喜ばしい。問題は、それを活かす場が極めて限られている点です。
事務所に「保田の“歌”を売る」気がないのは、もはや明白といっていいでしょう。保田のために曲を書き下ろすことって、当面ないような気がします。
しかし「保田の“歌心”を売る」つもりはあるみたいですから、諦めなくてもいいとも思います。
この日の『ふれあいホール』のように、歌い手としての保田の実力を認めてもらえるような(ごく限られた層かもしれないとはいえ)場を、少しずつ少しずつ積み重ねていけば、具体的に何とは言えませんが、新しい世界が拓けるに違いない。一縷の望みに過ぎない? だとしても、ぼくはその可能性を信じたい。