大阪弁と、目の演技

NHKよるドラ「トキオ」、8話目にしていよいよ保田が登場。
以下感想です。ネタバラシ的なことは書いていませんが、多少内容について触れた箇所もありますのでご注意ください。

東野圭吾の小説「トキオ」では、主人公の拓実にとっての最大の謎は「時生という少年が誰なのか」ですが、冒頭で読者には時生の正体が明かされています(正確には、腰巻きのコピーに書いてあるので、読む前からわかっている)ので、読者にとっての楽しみは「拓実がいつそのことに気づくか」です。また、時生が拓実をしきりに実母と会わせようとする理由も読者には想像がつきます。
拓実にも読者にも伏せられているのは、なぜ恋人の千鶴が逃げたのかであり、その千鶴を探せと命令する人物が何者なのか、といったところです。
拓実が実母との再開を果たす話と、恋人の千鶴を追っていく話は、実は独立したエピソードなのですが、1話15分のドラマで、2つのエピソードを並行させると説明不足になると考えたか、福田靖の脚本では、ひとつにつなげてしまっています。
毎回ある程度ヤマ場を設ける必要もあり、配慮がたいへんでしょうね。原作の味を残しながらドラマ向きに手を加えていくのは、やさしいようで、難しい作業だと思います。
保田の役柄は大阪のオネーチャンです。
つまり、大阪弁でセリフを喋らなければならないということです。関東出身の役者にとって、大阪弁は難関です。ヘタするとドラマのリアリティが一気に消し飛んでしまいかねない。しかも現在は大阪芸人の跋扈によって、関東の視聴者も大阪弁を日常的に聞いていますから、イントネーションが自然かどうか、大阪人以外にもわかってしまう。関東人が関西人のふりをするのは、以前よりさらに難しくなっているわけです。
保田の大阪弁は、やはりちょっと怪しげ。思っていたよりはうまくこなしている印象ですが、明らかに大阪ネイティブの言葉ではない感じがところどころ出ちゃってますねえ。しかたがありません、すんなりこなせる人のほうが珍しい。
ただ、お飾り的ポジションのアイドルには、たぶん回ってこない役ですから、それだけ女優として扱われているのだとも考えられます。しかも保田の場合、演技を重ねていくうちに次第に上達していく可能性が期待できるので、今後の推移を見守りたいというところです。
特筆したいのは、目の演技が際立ってすばらしいこと。上手い下手という部分はぼくにはわかりませんが、目が大きいから、芝居がすごくわかりやすいんですね。わざとらしくなく、演じている人物の感情を視聴者に伝えられていると思いました。
たった1話分見ただけの段階であれこれ語るのは早過ぎますけれど、とりあえず気がついたところを記してみました。