辻加護卒業

辻加護卒業。
初期のハーモニー重視路線からリレーボーカルスタイルへ、ソフトロックの歌謡曲調からパーティソング的なダンサブルポップス中心へという変遷があり、その転機となるポイントが後藤真希の加入時期とほぼ一致することから、ぼくは後藤真希モーニング娘。にとって大きなエポックになっていると考えてきました。
たったひとり新メンバーが加入しただけで、グループの個性が別物になってしまう例は過去にもあって、たとえばトム・ジョンストンが健康上の理由で休養したため、急遽迎え入れたマイケル・マクドナルドが、カントリーとブルースを下地にした泥臭いロックバンドだったドゥービー・ブラザースをソウルフルなAORバンドに変質させる、ファンにとっては衝撃的な事件が1980年前後にあったのですが、そのイメージと重ねて見ていたのです。
しかし、それは社会現象の域まで達した「LOVEマシーン」ブームの興奮と、それまでのハーモニー重視路線が捨て去られたことに対する未練とが一体となって視点をぼやけさせたのかなあと思います。モーニング娘。の音楽性に関する転換は製作者側の都合であって、メンバーたちの意志とは無関係だったりしますし。音楽性の変化と後藤真希の加入はたまたまた時期が一致しただけでしょう。
とゆことで、冷静になって顧みると、実はモーニング娘。というグループのあり方、見た目の「色」を、本当の意味で大きく変えたのは、いわゆる4期メンバーなのですね。
なかでも、辻と加護の存在は、いい意味でも悪い意味でもモーニング娘。のグループとしての方向性を特徴づけました。その結果、モーニング娘。が急速に子ども集団と化し、大人の世界ではファンだと公言することが恥ずかしくなってしまったのでしたが、過去においても現在も、ふたつとない個性的なグループに発展したことは紛れもない事実です。

何十年も昔、アメリカの広告代理店が言い始めた「3Bの原則」というものがあります。
Beauty(美男・美女)、Baby(子ども)、Beast(動物)の3つのBが、もっとも強く視聴者を惹きつける要素だとする理論で、短時間のうちに商品を告知し、インパクトと好感をもってメッセージを伝えなければならないCMでは現在も3つのうちのどれかのBを用いた作品がさかんに制作されています。きれいなもの、かわいいものの映像は、それだけ効果的で普遍的なのです。
辻加護は、子役の女の子タレントにありがちな「小さい大人」めいた嫌味がなく、逆にいまどきの中学生にしては珍しいほどの子どもっぽさが魅力になっている、まさにBabyです。また、プロの芸能人として求められる規律から外れ、自由奔放に振る舞う様子にはBeast、動物に近いものを感じました。Beautyかどうかは、彼女たちが大人になってみないとわかりませんけれど、美女として眺めているファンがいることも確かですから、まあBeautyなのでしょう(ぼくは加護を見ると、どうしても杉浦茂のマンガを連想してしまいます)。
つまり、人の心に強く印象づけるための3つの要素がすべてそろっているのが、辻加護だったというわけです。
そんな彼女たちですが、いま、キャリア的・年齢的に中堅のポジションになって5期や6期の後輩たちをたてなければいけない状況を迎えています。モーニング娘。は、一時期ほど彼女たちの個性的なキャラクターを必要としなくなってきました。
辻加護」という商品価値をグループのなかで埋没してしまわないうちにモーニング娘。から切り離し、ブランドの確立をめざしたと思われる今回の独立決定は、ビジネスとしてはとてもまともな発想だと思います。

辻加護による新ユニットがどのような歌を歌い、どんな活動をしていくのか、まったく想像もできませんし、正直、さほど楽しみでもありません。強いて言えば、仮に大化けする可能性があるとするなら辻ちゃんのほうだろうと思っているので、そこに期待しないではないけれども、このおじさんは、天地真理小柳ルミ子が新人だったときからアイドルを見てきているのです。納得させるのは容易ではないと覚悟しなさい。あ、そんな覚悟はいらないですか。ターゲットはおじさんではありませんね、きっと。
■保田、「キンスマ」の新春スペシャルに登場
当然ながら、「キモいキャラ」としていじられてます。保田もだんだん切り返しが速くなってきました(編集のおかげかも?)。企画の主旨を理解して、自らキモさを上塗りするような発言をするなど、若干の成長がみられます。年長者のゲストがいないから、のびのびやれたのかもしれません。もう少し、ボキャブラリーというか、言葉のパターンを増やすと、もっとよくなる気がします。
がんばれ、保田。ぼくもがんばるから。