オレンジは希望の色

SF小説の古典的名作、ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』は、ドアが11個もあるばかげた家と、そのうちの一つのドアが夏へ続いていると信じている猫のエピソードから物語が始まります。
ピートという名のその猫は、外が一面の銀世界になる冬が嫌いで、飼い主である主人公に11個のドアをすべて開けさせ、夏へ連れて行けとせがむのです。
ご存じの通り、この場合の「夏」とは「希望」のメタファーでもあります。
さて、いったいどうして30年近く昔に読んだ小説を思い出したかというお話をしなければ、何のことやらですよね。
実は、音楽ガッタスの『Come Together』を聞いたから。そこで感じたことをまとめようと考えているうちに、希望というキーワードへ辿り着いたんです。


『Come Together』は、ギターのシンプルでソリッドなリフが心地よいイントロから始まるロック調の軽快なアイドルポップス。ただ、正調アイドルソングかといえばちょっと違う感じ。いい意味で「変」なところのある歌になっています。
とてもノリがよく感じられるのは曲調ばかりではなく、韻やリズム感に配慮された、弾むような詞による効果もある。地球がどうのエコロジーがこうのという、やたら大風呂敷なメッセージを軽々しく盛り込むつんく♂さんお得意の作法は、ぼく自身は逆に安易に感じるので「またこれか」って思っちゃうんですけれど、言葉遊び的な部分の巧みさはさすがプロだなという印象です。
ただ、詩に書き込まれた世界観は希望というより閉塞感が漂っていて、出口のない暗闇で惑っているように読めるけれど、そこまで重苦しく受け取ると深読みのしすぎかな。まあ、お隣の夫婦喧嘩から世界平和まで、どれも等価的に自分に身近な問題として考えるべきコトなんだよ、くらいな感じで解釈するのが正解に近いような気がします。関係ないけど、かつて「ラーメンからミサイルまで」と謳っていた某総合商社があったな。


しかし、いずれにせよ曲自体はなかなか出来がよく、ぼく自身はかなり気に入ってます。いかにもハロプロ・ソングという括り方で枠に収めちゃうこともできそうだけど、ちょっと躊躇するような異種の新しさもあります。
音楽ガッタスって、あまり利益を生まないと思われるフットサル活動を正当化するために生まれた「しかたなし」ユニットじゃないかと勘ぐっていたんですが、案外つんく♂さんは“本気”でプロデュースしているみたいだと考え直した次第。
考えてみれば音楽ガッタスって、吉澤と石川というエース級がいて、ブレイク中の里田もいて、という贅沢なメンバー構成。近年、いろいろネガティブな話題を立て続けに提供し続け、そうでなくても停滞気味だったハロプロの起死回生策となるのは、もしかしたら音楽ガッタスかもしれない。そう、つまり、ハロプロ夏への扉……希望になるのじゃないか、と。
ここでやっと、最初に持ち出した話につながる(笑)。というか、つながってないわな。体裁のいい前フリを入れようと意図したものの、筋の通った一文に仕立てる自信はもともと薄かったんだ。
見切り発車で書き始めちゃったわけですが、いやあ、久々にワクワクするハロプロの曲を聞いたもんでね。ちょっとおじさん、浮かれたかも。
実はここからもうちょい展開したい論があったのですが、頭を冷やしてからにしておきます。