カン娘の歌

ハロプロ系のコンサートへ行く予定がまったくないんですよね。
日常の暮らしにいろいろと悩みが多くて、楽しみに集中する気分でないので。十代のころから唯一続いている趣味であるはずだった読書も、ここ2〜3年はすっかり活字から遠のき、月に2冊読めればいいほうになってしまいました。下手すると、資料以外の本を買うのが半年ぶりなのに気づいて愕然としたりする。
そのような運気の下がっているときこそハロプロを見に行き、楽園幻想にどっぷり浸ってこの世の憂さを忘れるべきなのかもしれませんが、コンサートの終演後、現実に引き戻されたときの虚しさが半端でない。仕事環境をすべてリセットする以外に解決の手だてがなさそうな悩み事群に、また直面しなければならぬのかと思うと、コンサート会場から自宅へ戻る足取りが、やりきれないほど重くなります。


そんなわけで正月のエルダークラブも、1月末の横浜アリーナの公演も、チケットを取っていません。横アリはぼくの地元ですから、ここは押さえておこうかとチラリと考えましたが、結局プレオーダーを回避。あさみ&みうなのフェアウェルツアーになると知り、あわてて「ぴあ」や「イープラス」にアクセスしたものの、ときすでに遅し、ソールドアウトでありました。


だから、「動いているあさみとみうな」の姿を見るのは、昨年末の紅白が最後になる可能性大。
とはいえ、邪魔くさい着ぐるみに前をふさがれ、ほとんど見えなかった。香西かおりのバックではしっかり写っていたから個人的には満足ですが、視聴者の記憶にどれほど残ったか。もとより「紅白出場者」ではないから記録にも残らないわけだし。
目立ちきれないことが宿命づけられたようなユニットだよなーと、つくづく思うけれども、ぼくは、表に出ない仕事をしっかりやる人も芸能界には必要だと考えているので、あさみとみうなの引退には、転身するなら早いほうがいいとは知りつつも、本音を言えば、結論を急ぎすぎたとしか思えないのです。
でも、彼女たちはどこかのタイミングで必ず区切りをつけなければいけないという気持ちだったのだろうな。続けることと同様に、別の道に進むと決めるのも、プロの誇りということなんだろうと思います。


保田については、いまや懐かしの『LOVE LOVE 愛してる』でサックスを吹いて見せた(まあ、楽譜通りの音が出ているというレベルにすぎず、それ以上に歌はまったく声が出てなくて、その緊張ぶりは微苦笑ものでした)あたりから何となく気になっていたから、何だかんだで9年くらい注目してきているわけですが、カン娘のファン歴はきわめて浅く、レパートリーを主だったところだけながらちゃんと聞いたのもごく最近のことです。
ぼくの音楽に対する嗜好からすれば、りんねとあさみによる2人体制までの曲が、音的にはもっとも体に入って来やすいかなあ。でも、メロディの豊かさ、ポップな楽しさという点で、もっとも輝いていたのは、「……に石川梨華」時代だと思う。
みうな加入後の「……に紺野と藤本」時代の曲も悪くないけれど、カン娘にしては洗練されすぎちゃったかなーという印象。この面子では歌唱力が頭抜けている藤本を活かすにはこうするしかなかったんだろうね。
カン娘最後のレコーディングであろう『革命チックKISS』の歌詞は、あさみ・みうなの引退を踏まえた卒業ソングとしか読めない(実際問題、その通りなんだろうけど)。それにしても、サビとAメロ・Bメロのそれぞれに乗っている歌詞の視点がずいぶん違います。別の曲をガッチャンしたかのようだ。
といった疑問はともかくとして、これだけすぐれた曲を多く持つユニットだったんだなあ、…と、いまさら感ばりばりですが、そう思いました。