保田の、というよりドラマ自体の感想を言いたい放題

泉ピン子主演のドラマ『新宿の母物語』、見ましたよ。
うーん……どうだろうね、これ。ヒロインが美化して描かれるのはかまわないが、登場人物の性格づけもセリフもステレオタイプすぎて嘘くささを感じる。
占い師とは、ライフ・コンサルタントであったり、博愛の人だったりするとともに、「嘘も方便」という諺の意味するところを世界一上手に使う人だとぼくは思う。存在としては、スポーツ競技チームのコーチに近い。おまえはもっとできる人間なんだと鼓舞して、目の前の苦難に立ち向かっていく勇気を与える職業であるといえる。ある意味、人を騙す口車の達人なんです。
もちろんそれは悪い騙し方ではなく、むしろ逆で、夢を持たせる騙し方なわけです。その点においては広告のコピーと同じ。ただ広告の場合は、ターゲットの意識調査や時代性と、商品の特性を掛け合わせたところから訴求点を導き出していくのに対し、占い師は客の生年月日や手相などのデータをふまえ、自分の経験や勘を加味して答えを出す。しかも、瞬時にそれをやる。すごい才能だと思う。
そのような特異な才能を持ち、しかも新宿の母と呼ばれるまでの人気を獲得した人物が、ふつうの人生を送ってきたわけがない。モデルが存命中の人物で、しかも原作の提供者とその家族となると、都合の悪い部分もきれい事風に表現せざるを得ないのでしょうけれども、子を置いてまで東京へ出て行きたかった主人公の考え方、有名になった母を訪ねて上京する息子の動機、そこがすごく大事だと思うんですが、曖昧に流されてしまったような感じがします。
大勢の客から慕われるのに、たったひとりの息子との接し方がわからない歪んだ構図がキモでしょう。そこがおもしろいのだから、その部分にもっとぐいっと寄ってしまったよかったのではないか。何もかも詰め込もうとし過ぎて、薄っぺらな泣きのシーンがやたら続くのには、正直、閉口した。「運命は変えられる」というキーワードも、何だか取って付けたようでした。
新宿の母という存在に対して、いちばんの批判者である実の息子役を演じたビビる大木が意外によかった。感情のないきょとんとした目つきが役に嵌っていたと思う。
昭和中期の娘を演じさせたらいまや第一人者との噂の(嘘)保田は、期待を裏切らず、ってところかな。安心して見られるし、上手いと思うんだけれど、しっかり演技しているのがときおり浮いて見えることがあるのは何でだろう。テレビより舞台向きの演技なのかしら。